【博士とお金】学振と初任給の比較からインフレについて考えたら、色々思うところがあった話!

どうもマルネギです!

昨日の記事

【書評/メモ】「敗者のゲーム」を読んで感じた株式投資で負けない方法とは?

のなかで、面白い数字を見つけたので、記事にしたいという話をしていましたが、今回はその内容についてちょっとお話していこうと思います!

見つけた面白い数字というのは、大卒の初任給を調べているうちに、修士卒の初任給も厚生労働省から発表されていることに気が付いたのです。

本題に入る前にですが、修士の初任給はH17年(2005年)からしか載っていません。

新卒の市場に「修士」という人たちがいなかったのでしょうね。

ちなみにですが、「博士」は現在も初任給のデータは公開されていません。

個々人の能力に応じてばらつきも多かったり、そもそも中途採用されることがあったりで、「初任給」という概念に当てはまるのかどうか微妙というのもあるとは思いますが、それだけまだ、トリッキーな道であると思われているということが数字を見る前からなんとなく推察できてしまいますね...!

これだけ聞くと「やっぱ博士って茨の道だな...」って印象かもしれません。

ただ、博士は在学中ずっと無給なのか?というと必ずしもそういうわけではありません。
各大学や財団から博士課程在学中の学生に対して、生活の補助となる金額を支給するところも多々あります。

そして、それらの中で最も有名であると思われ、かつ難関であるところの一つが

日本学術振興会。略して学振と呼ばれる機関です。

ここの制度で「特別研究員制度」と呼ばれるものがあり、月額で生活費をもらえた上に、「科研費」と呼ばれる研究遂行のためのお金も出してもらえます。

なんだ!最高かよ!って思われた方も多いかと思うのですが、問題はその額です。

学振からもらえる額は月額20万(厳密には税金等でもうちょい少ない)です。

おそらく、この額、読者によって受け取り方が全く異なると思います。

もし、学生で、これから学振を目指そうとしている人が読んでいれば、そんなもらえるんだ!ってなるでしょう(実際、自分もそうでした)。

この額、例えば進学して、就職していった同期と話すと分かるのですが、「企業に比べるとかなり少ない」と思った方がいいと思ってます(企業に行ったら行ったで、諸経費引かれて手取りは一見多く見えますが)。

進学してるということは修士卒の状態ですよね?先ほど言った、修士卒の初任給は平成30年のデータで239.9千円です。

つまり、月にして約3.9万円低いです。

さらにちょっと調べてて衝撃だったのですが、月額20万は学部卒の平均よりも低いです

これはちょっと驚きでした。少なくとも学部から2年間研鑽を積んだ(はず)の能力の人間を学部生以下の賃金で働かせることができるのです。

こういうことを書いたり言ったりすると、「好きな研究して、金もらえるだけありがたいと思え!」という層が必ず一定数出てきますが、これだけ「選択と集中」とかいう標語が広まった中で、何のしがらみもなく本当に好きなことしてる研究者/博士学生というのは一握りしかいません。

実際に、自分も在学中に「本当に背景が「やりたいからやった」で済まされる時代は終わった」という話をちらちら聞きました。

これだけ、日本の科学力ガーとか技術立国ガーとか連日のように聞くのに、待遇がこれなわけで。

さらに、wikipediaの「特別研究員」の項目によると
「もっともその額の少なさ(DCの給与は2015年時点の大学院修了者の平均初任給である22万8千円よりも少ない)、副業禁止規定の法的根拠、社会保険への加入不可などの待遇が、技術立国を目指す国の方針と矛盾しているとして、文部科学省内部の検討会でも認知されている。」とあり、中身までは確認してませんが、この文章のソースの場所は文部科学省でした。

つまり、国は現在の博士の待遇が「悪い」と認識していながら、放置しているように見えます。

その証拠といってはなんですが、学振のお金は国庫から出るので、国の予算に左右されますが、予算が増額した時、学振は「増額」ではなく定員の「増員」で対応をします。

つまり、金額を調整する気はないのではないかと考えています。

衰退してるってことは日本のなかで、「学者」になることの人気が下がっていることの証明なわけで、人気の低迷というのは制度の老朽化の裏付けでもあると思うわけです。

よく、給料が低いっていいながら、転職しないひとを揶揄するコメント見ますよね。あれは裏返せば、薄給と考えられる業界は人気がなくなるとも言えるわけで、現在の学術界もそんな状況なのではないかと考えています。

そして、今ちらっと書きましたが、自分はこの現状を「制度の老朽化」がもたらしてきたと考えています。

日本学術振興会のHP
https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_gaiyo.html

を見ると、特別研究員の制度自体は昭和60年度(1985年)からスタートしていることが見て取れます。

そして、調べた限りでは、特別研究員がもらえる月額は設立当初のままです。

昨日の記事を見て頂ければおわかりになると思うのですが、日本の物価は最近低迷していたとはいえ、基本的に右肩上がりを続けていました。

つまり、設立当初の様子(特に修士卒の人との賃金の比較)を数字上からみたらどうなるか興味がわいたのです。

長々と書きましたが、今回見つけてきた、初任給のグラフはこちらになります。

salary
厚生労働省、賃金構造基本統計調査、企業規模別新規学卒者の初任給の推移<昭和51年~平成30年>のデータに基づき作成

(今回調べて明確に知りましたが、いわゆる「平成バブル」って1986年~1991年ってされてるんですね。きれいな上昇からのストップをグラフが描いていて生々しいです。)

これを見るとわかりますが、昭和60年度の大卒初任給は14万円でした。

ちなみにですが、平成30年を基準として、修士卒の初任給が学部卒と全く同じ比率であったとすると、修士卒の初任給は、約16万円です。

そもそも学振自体も当時の方が倍率はすごかったという話も聞きますので、おそらく、当時学振に採択された人はいわゆる「天才」ともてはやされ、憧れだったのでしょう。

しかし、時代は流れ、既に学部卒の初任給に抜かれ、博士は「茨の道」とか、「ギャンブル」とか言われるようになってしまいました。

今までのように固定で支給することにもメリットは数あると思います。先にもらえる額がわかってた方が何かと計画もたてやすいしね。

しかし、この40年で、特別研究員の制度は「自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与えることにより、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的」に対する制度としては随分と形骸化が進んでしまったのではないかと思います。

「自由な発想のもとに主体的に選んだ」テーマは企業と結びついて産業応用する機会も多々あると思います。しかし、学振はこれを「副業の禁止」や「研究の専念義務」で阻止してしまっています。

自分が所属していた数年間でもいくつかの規制は緩和され、多少動きやすくはなったものの、まだまだ、規制が多いのも事実です。(実際に研究のコラボが学振に許可されず、特別研究員を辞した方も知っています。)

最後に、これは完全なる主観からの偏見なのですが、それでも学振を目指そうとさせる指導教員が多いというのも実は問題なのではないかと考えています。

1985年に博士の学生で、24~27歳だった人が現在でもアカデミアに残っていると、その方たちは現在58~61歳となっており、おそらく、相当なポジションについてらっしゃる方たちが多いのではないかと考えられます。

その方たちは学振=すごいという当時のイメージの方程式が頭にあるため、現在合理的かどうかを置いておいて、学生に申請させるということが発生してはいないかと危惧しています。(実際、学振は箔がつくという話は何回も耳にします。)

これはある種のブランド化したものであると同時に、一度入ってしまえば、在学中はよっぽどの覚悟がないと抜けられないものとなります。

すると、学振側は毎回応募者多数のため、絶対的な地位を確立し、そこにまた価値が出るという循環が生まれます。学振にとってはこれはいいことでしょうが、制度の見直しからは目を遠ざけるものとなります。

これを崩すためには、同額またはそれ以上の制度の充実であったり、酷なようですが、学生自身が自ら資金を調達し、学振に対してNOを突き付けられる力を身に着ける必要があるのではないでしょうか。

ブランドを崩すというのは並大抵なことではありませんが、今後の日本の科学技術を発展させるためにも、そのブランド力を活かした改革には大きなものがあると思っています。

困窮に立たされたいまだからこそ、できる何かがあるのではないでしょうか。

なんだか、書いてるうちに色んな想いがあふれてきてとりとめのない文章になっちゃいました!

とりあえずまとめとしては
・学振はインフレの波に呑まれてしまった制度なのではないかと思うデータを得た
・優秀な博士学生の皆さんは自らの力で道を切り拓こう!
ということでした!

乱文・雑文でしたが最後まで読んでくれてありがとうございます!

ではでは!